以前もお話したしように、不妊原因検査は夫婦とも同時に実施する方が良いと伝えしてきました。その理由は男性側が原因となっているケーズが全体の25%程度あるからです。
あと男性側が思いがちな間違えと射精して乳白色の体液が分泌されていれば、その中に精子がいると考えがちですが、実はこれが大きな間違えなのです。
精液は何からできている?
精液は精漿と精子の混合物で、98-99%が精漿で精嚢と前立腺の分泌液からできています。
残りの1-2%が精子となります。つまり乳白色の体液≠精子ではないのです。
精液検査
精液所見の基準(2010 WHO 改定基準)
精液量 | 1.5ml以上 |
精子濃度 | 1500万個/以上 |
精子運動率 | 40%以上(内80%が前進運動精子) |
正常形態率 | 4%以上 |
精液中白血球 | 100万個/ml未満 |
色調 | 乳白色 |
正常精液:上記基準を満たすもの
乏精子症:総精子数が3900万個未満
精子無力症:精子運動率が32%未満
奇形精子症:形態正常精子が4%未満
無精子症:射精精液中に精子がいない
膿精子症:白血球が100万個/ml以上のもの
異常があったら?
無精子症以外は受精率低下の原因となります。精液検査は変動するため、異常と認められた場合は精液検査を2-3回実施してその平均値をとって精液所見を評価します。その結果を踏まえて、治療方針を決定します。
無精子症とは?
では無精子症とはなんでしょうか?
無精子症は射出精液内に精子が極端に少ないか、全く精子がいない状態のことです。一般男性の100人に1人、不妊男性の5人の1人が無精子症です。
機能障害の一つで、精子を作る睾丸の機能が低く、精巣内の精子の数が極端に少ない非閉塞性無精子症と精子の通り道が詰まっている閉塞性無精子症があります。
非閉塞性無精子症(NOA)
・無精子症の80%
・精子の通り道は正常だが、造精機能に異常がある。
・精巣の大きさが小さい、ホルモン値に異常がある
・精子が手術(TESE等)で回収できる確率は40-50%
原因
染色体の数的な異常(クラインフェルター症候群など)
性染色体(Y染色体)の遺伝子異常
その他(精索静脈瘤など)
閉塞性無精子症(OA)
無精子症の20%
精管に異常があるために精子が いない
精巣の大きさ、ホルモン値はほぼ正常
精子が手術(TESE等)で回収できる確率は90-100%
原因
精管が生まれつきない(先天性両側精管欠損症:CBAVD)
尿道炎や外傷、射精管閉塞症、前立腺嚢胞、鼠経ヘルニアやパイプカット術後など
非閉塞性または閉塞性無精子症が疑われる時、行う検査は?
ホルモン検査ーLH /FSH/PRL/テストステロン値の計測
超音波検査ー腫瘍や精索静脈瘤の有無を調べる
精巣容量測定ー精巣の大きさから精子が創られているかを予測する
染色体検査ー染色体の数やY染色体異常の有無を調べる
治療
精巣内精子回収法(simpleーTESE、micro-TESE)
精巣内から直接精子を回収します。NOAでsimpleーTESE で回収が難しいと判断した場合は、顕微鏡下で状態の良い太い精細管(精子が作られるところ)を見つけて、その中に精子がいることを確認します。採取した精細管は、凍結保存します。
いずれも手術の確保できた精子を使って受精させる場合は顕微授精(ICSI)になります。