いろいろな情報を入手して勇気を出して不妊治療専門クリニックを受診し、諸検査を実施、そして採卵・移植を行った方が転院を考える時期は「いつか?」についてお話します。

高刺激なのか低刺激なのかで対応は変わりますが、一般的には移植を4-5回実施しても結果がでなければ、転院を検討した方がよいでしょう。ただし条件があります。以下説明していきます。

胚に問題があった場合

胚に問題があった場合(移植胚の回復が悪かった、グレードの低い胚を移植した)は、良好胚があれば移植を行います。なければ採卵を再度行うことで良好胚を確保します。

胚に問題がない場合

移植を2回しても結果でなければ、着床障害の原因を検索する必要があると思われます。具体的には慢性子宮内膜炎(長期間の子宮内膜の炎症が継続する病態)や銅亜鉛の検査となります。諸検査について後日お話しましょう。

良好胚盤胞が着床する確率は60%程度あり、若い患者さん(35歳未満)の正常胚(染色遺体異常のない確率は50%以上あります。)の確率が高いため2-3回で妊娠できるかそうでないかの結果はでるでしょう。

着床はしたが、化学流産、稽留流産となった場合

稽留流産になった場合は、その児に染色体異常があったのかを検査することで次の打ち手を得ることができます。児に染色体が無ければ、不育検査を行うことが推奨されるでしょう。

また化学流産になった場合は、妊娠判定時のHCG採血結果によりますが、着床の窓がズレを検討する必要あるでしょう。窓がズレていれば移植の時期を再検討するなどの対策が必要です。ただし着床の窓を考える前に、慢性子宮内膜炎や銅亜鉛の検査を行ったほうが良いでしょう。

低刺激の場合

基本、移植する胚は1-2個(うまく行けば、3-5個)でしょうが、胚盤胞になるのは1-2個でしょう。低刺激の売りは、自然の形に近い状態で採卵をすることが自然妊娠と同じ環境を作るというものなので、1回1回の採卵移植は、絶対妊娠を外せないわけです。ですからこの自然周期もしく低刺激周期を行って2回採卵2-3回移植してもうまく行かないのであれば、改善対策を提供できないのであれば、転院は仕方ないでしょう。

高刺激の場合

移植できる胚は5-7個程度確保できるとして、移植を2回してもうまく行かない場合は、慢性子宮内膜炎や銅亜鉛検査を実施し、異常があれば対処、なければ、全く着床しないのか、着床するけど化学流産なのか、稽留流産なのかで対応が変わってきます。

残念ながら、日本では胚の着床前診断が認めれていないため、移植胚の選定はあくまでもグレードで判断するしかありませんが、「うまく行かなれば、また次移植」なのではなく、うまく行かなかった理由を考えてくれているかのが、転院するかの判断材料となります。

重要なことは、次にどのような対策を講じることができるのかです。「移植した胚が悪かったため、また移植しましょう」という説明は、初回ならまだしも2-3回目以降は納得できないところはあるでしょう。

転院するかどうか迷った時は参考にしてください。