妊娠中の喫煙は、睾丸容積の減少や精子濃度の低下など、男性成人期における生殖への悪影響と関係してると言われています。

本研究では、母体喫煙との関係で、ヒトの妊娠初期の生殖腺に存在する生殖細胞と体細胞の数を評価しました。著者らの研究室からの卵巣に関する以前に公表されたデータ結果も合せて評価しています。2010年とすこし古いですが、デンマークからの報告です

Cigarette smoking during early pregnancy reduces the number of embryonic germ and somatic cells
L.S. Mamsen, et.al
Human Reproduction, Volume 25, Issue 11, 1 November 2010, Pages 2755–2761, https://doi.org/10.1093/humrep/deq215

方法と対象

受胎後37〜68日の年齢の24人の胎児期精巣が対象とした。妊娠中の喫煙と飲酒習慣についての情報を得るためにアンケートを実施。組織学的切片中の生殖腺細胞数を評価するために、光学分別技術が使用された。

結果

喫煙未曝露と比較して、出生前に母親の喫煙にさらされた精巣で観察された生殖細胞数の55%の有意な減少[95%信頼区間(CI)74-21%の減少、P = 0.004]および体細胞37%の減少(95%CI 59-3%、P = 0.023)。母親の喫煙の影響は、ヘビースモーカーでは用量依存的であり、アルコールやコーヒーの摂取などの交絡因子を調整後も同様な結果でした(P = 0.002)。

以前の卵巣での結果と合わせると、精巣でも卵巣でも性腺に関係なく、生殖腺の生殖細胞数もまた、曝露された生殖腺と未曝露の生殖腺で41%(95%CI 58-19%、P = 0.001)減少した。

結論

母親のたばこの煙への出生前曝露は、雄性および雌性胚の生殖腺における生殖細胞および体細胞の数を減少させる。この影響は、たばこのけむりに曝露されると、子孫の将来の生殖能力に長期的な影響を及ぼす可能性が示唆している。今回分かった結果から、近年判明している出生率の低下の1つの潜在的な原因となっている可能性がある。

解説

妊娠初期の母体の喫煙が胎児へどんな影響を及ぼしているのかについて調べた報告です。

なんとなく胎児への影響を考え禁煙する方もおられますが、継続した場合に何が起こるのかが今回の報告で分かりました。生殖細胞数の55%の減少は衝撃でした。

これが成人してからの生殖機能に影響があると結論づけています。ただ減少の理由については、分かっていません。

暴露の影響は1日の喫煙本数に影響します。機会喫煙(時々)、1-15本/日、16-25本/日の方の減少への影響は、喫煙しない人を0%とすると21%、23%、27%となっており、機会喫煙でも影響はかなりでていますね。

妊娠の可能性がある方は まだ見ぬ子孫のためにも禁煙する方がよいという根拠となる報告でした。