多嚢胞性卵巣症候群の患者さんは排卵しずらいことが不妊原因となっています。その排卵障害を改善するためにクロミッドやレトロゾールという排卵誘発剤を用いて治療をされていると思いますが、今回排卵率を改善する研究が発表されましたので報告します。
A randomized controlled trial of combination letrozole and clomiphene citrate or letrozole alone
for ovulation induction in women with polycystic ovary syndrome
Fertil Steril 2019;111:571–8.
https://www.fertstert.org/article/S0015-0282(18)32225-8/pdf
方法と対象
70人を2群(コンビネーション群:レトロゾール2.5mg+クロミフェン50㎎と単独群:レトロゾール2.5㎎)に分けました。
18-40歳のPCOSと診断された婦人で、排卵障害以外に不妊の原因(夫の精液所見も含む)が無い方を対象としています。PCOSの診断はロッテルダムクライテリアの基づいています。両群間で年齢、体重に有意な差はありません。月経3日目から5日間内服しました。排卵は黄体中期の血清プロゲステロン値が3 ng/mLより高い場合としました。黄体中期は排卵検査薬で陽性がでたら7日後とし、もし検査で陽性が月経21日目までに出なかった場合は血液検査を実施しました。不妊症の定義は35歳未満は12か月以上、35歳以上は6か月以上不妊期間があることを前提としています。精液所見は 1500万個/mLと 正常運動率 >40%としています。除外項目として妊娠中、最近の経口避妊薬使用、原因不明な不妊症、コントロールできていない甲状腺疾患、高プロラクチン血症
結果
排卵率はレトロゾールレトロゾール+クロミフェン群 27 of 35 women [77%] vs. レトロゾール単独群 15 of 35 women [43%]と有意にコンビネーション群が排卵率が高いことが分かりました。多胎妊娠の高度な副作用は両群間には認めず、頭痛、火照り、腹痛、などの副作用も両群間で有意な差は認めませんでした。ただし妊娠率、流産率、生産率には有意な差は認めませんでした。
考察
今までレトロゾールとクロミフェンの同時内服の報告はありました。これは排卵ではなく卵胞径が18㎜を超えた時点でHCGを投与し、36-38時間後に人工授精を行って妊娠率を見た報告ですが、定義としてレトロゾール抵抗群(4周期治療実施)とクロミフェン抵抗群(6周期治療を実施)の方を対象としていました。レトロゾール5㎎とクロミフェン100㎎と今回の倍量を内服しています。対象が限定されていることが今回の研究と異なると記載してあります。
今回の研究でコンビネーション群が排卵率が単独群よりも有意に高くなることが分かりました。多胎妊娠もなく低リスク低コストでありPCOSの患者さんの排卵誘発とて有効あるとしています。今後は症例を増やして、妊娠率や生産率を改善できるのかどうか検討する予定です。