慢性子宮内膜炎(CE)は、習慣性流産や着床不全などの不妊原因を起こす場合があるとされています。患者さんのほとんどに自覚症状がありませんが、子宮の基底層まで細菌が入り、子宮内膜が再び作られるために、自然には治りません。今回はこの慢性子宮内膜炎(CE)を診断するうえで、子宮鏡検査が有効な検査であるかどうかを検討した報告がありました。

Correlation between hysteroscopy findings and chronic endometritis

Dongmei Song, Tin-Chiu Li, Yun Zhang, Xiangdong Feng, Enlan Xia, Xiaowu Huang, Yu Xiao
Fertility and Sterility, Vol. 111, Issue 4, p772–779
Published online: January 22, 2019

1189名に子宮鏡検査を実施しました。子宮鏡検査後に子宮内膜生検を行い、形質細胞の特異的マーカーであるCD138にて免疫染色を行いました。

結果として…

1189人中322人(27.1%)がCD138染色で陽性でした。322人中、内膜生検前に実施した子宮鏡検査では、169名(52.5%)に子宮内膜充血、27名(8.4%)に内膜間質性浮腫、11名(3.4%)にマイクロポリープが子宮内に確認されました。CEの子宮鏡特徴の有無に関する観察者内(同じ観察者が同じ検体を見て出した結果)および観察者間(同じ検体を違う人が観察して出した結果)の一致のκ(カッパ値は、それぞれ0.86および0.73でした。1つまたは複数の子宮鏡検査陽性所見ある場合CEであることの感度、特異度、陽性および陰性予測値、および診断精度は、それぞれ59.3%、69.7%、42.1%、82.8%、および66.9%でした。

結論

子宮鏡検査での子宮内膜充血、マイクロポリープまたは子宮内膜間質性浮腫がある場合は、CEの疑いがあると考えられますが、CEの診断に関する子宮鏡検査の全体的な精度は67%であるため、子宮鏡だけで診断することは難しいと考えられます。

子宮鏡検査後の、子宮内膜生検でのCD138 の免疫染色による組織学的検査はやはり必要です。

解説

中国からの報告です。内膜組織診でCEを診断することが世界の標準ですが、とても痛い検査のため、それ以外に診断できる検査がないかということで子宮検査が行われています。CEを疑う所見として内膜充血(ストロベリースポット)やマイクロポリープが有名ですが、実際の関連性がどうかを大規模に調べたものです。子宮鏡所見に異常がなくてもCEである割合が、17.8%もありました。子宮鏡の精度も67%と低いため、きちんとCEを診断するには内膜組織診が重要であることが改めて確認されました。文中に感度、特異度が出てきましたが、下の表にあるように感度とは真陰性の数/本当に陽性の人の合計で、特異度は真陰性の数/本当に陰性の人の合計を示しています。感度59.3%、特異度69.7%、陽性的中率42.1%、陰性的中率82.8%と子宮鏡で陰性であった場合、内膜組織検査でも陰性である確率が83%と高く出ていますが、それでも90%以上はありません。その他のは指標はそもそも低すぎます。現在CEを診断する手段として、子宮鏡検査や子宮内細菌叢の検査等がありますが、今回は子宮鏡検査と内膜組織診を比較検討しました。CEが陽性でも正常所見が17.8%も見られるのであれば、ちょっとあてにはできないと思います。