STDって?

不妊症の原因としてSTD(性感染症)との関連も指摘されています。STDとは性交渉によって感染する病気のことです。代表的な疾患はクラミジアです。パートナーが感染している場合、コンドームをせずに性交渉を起こった場合、相手を感染させてしまう可能性は50%と言われています。

男性の症状は?

男性がクラミジア感染した場合は数日以内に尿道炎がおこります。具体的には、排尿時に痛みを伴ったり、しみたりする症状が起こります。 痛みを生じるため、比較的早めに泌尿器科を受診し抗生剤の内服で治療が済んでしまいます。病院に行かずに我慢をしてると尿道の奥にある前立腺へクラミジア感染が広がります(前立腺炎)。前立腺まで感染が到達すると抗生剤が効きにくくなります。前立腺炎の症状は鼠径部(足の付け根)の痛みです。さらに放置を続けると最後には副睾丸炎となります。副睾丸は精巣上体とも呼びますが、産生させた精子が貯蔵されている場所です。副睾丸炎の症状は激痛や高熱です。精子は熱に弱く、高熱が長い間続くと精子は死んでしまいます。この炎症が両側の副睾丸に達すると不妊の原因となります。

男性は症状が出た場合はすぐに泌尿器科を受診しましょう。

女性の症状は?

一方女性側は男性と違い症状が出にくい傾向があります。つまり自覚症状がないのです。silent PID(骨盤内炎症性疾患)とも言われるゆえんです。中には、おりものが増えたり、軽度の腹痛、おりもののにおいがでることもあります。まずは子宮頚管(子宮の出口)に感染が起こります(子宮頚管炎)。しかし気づかないでいると子宮から卵管の方へクラミジアが上行感染し子宮内膜炎、卵管炎を発症します。最後には腹腔内にクラミジアが広がりクラミジア腹膜炎へなります。ここまで病気が進行すると、発熱や腹痛が出現します。骨盤内に炎症が起こると卵管と周囲の臓器が癒着を起こします。卵管の癒着は排卵時の卵をうまく卵管采(卵管の先端)でキャッチできなくなるためキャッチアップ障害といわれており、これも不妊の原因となります。また卵管采どうしがくっ付いてしまうと卵管水腫(卵管内に液体が溜まって腫れること)になり、これも卵をキャッチはできません。病気が進行すると肝臓と横隔膜と癒着した状態(Fitz-Hugh-Curtis)になります。

検査は?

男性は尿検査(クラミジア抗原検査:PCR)で行います。

女性は子宮頚管のおりものでクラミジア抗原検査(PCR)を実施します。

また現在の感染や過去の感染の状態を把握するには血液でクラミジア抗体検査を行います。

治療は?

治療は抗生剤を内服します。一回の内服でほぼクラミジアは治療できます。抗原検査で陰性が確認できれば治療ができています。ただし女性の腹腔内に一旦できてしまった骨盤内癒着は抗生剤の内服では治せません。

クラミジア検査の問題点

先ほど説明した男女別の検査ですが、抗原検査の場合は今感染しているかどうかが分かりますが、抗体検査の場合は過去の感染をみていることがあります。一方が陽性であった場合、パートナーにも検査を行う必要がありますが、問題はここです。つまり一方のみが陽性であった場合です。よくあるケースは夫が陽性であり、妻が、抗原もしくは抗体検査で陰性であった場合です。夫の不貞を疑う状況になることもあります。その逆もあります。二人の関係が悪くなってしまうのです。偽陰性(本当は陽性だけど陰性とでてしまうこと)が起こるケースは、風邪等で抗生剤を内服することで治療された場合や夫の尿検査が初尿(出始めの尿であり、途中の尿ではない)でない場合は、検査結果は陰性となることがあります。本当のことは分からないとしても、夫婦でよく話し合って問題を乗り切ることが重要です。

今回はここまでです。

次回は教えて先生! Q&Aを送りします。