不妊の原因として分かっているものは何がある?

①排卵障害

②卵管疎通障害

③精液とおりものとの相性が悪い

④精液所見不良

⑤黄体機能不全

⑥甲状腺機能障害(亢進症、低下症)

⑦高プロラクチン血症

⑧子宮筋腫、子宮内膜症

 

それでは一つ一つ説明していきます。

 

排卵障害とは

排卵にいたるまで卵胞が育たないということです。排卵はいつかするけれど、時間がものすごくかかってしまい、結果、夫婦生活をとっていてもタイミングがズレているので妊娠できないのです。この代表的な疾患は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:polycystic ovarian syndrome)という病気があります。排卵誘発剤(内服、注射)を使用して卵胞を育てる治療を行います。

他では、下垂体機能障害(脳の中に臓器の下垂体が、卵胞を育てるホルモンをうまく分泌できない状態)です。いわゆるhypo-hypoという表現をすることがあります。下垂体から卵巣を刺激するホルモンがでていないために卵胞が育つことによって分泌するE2(エストロゲン)が出ていない状態のことを言います。このようなケースは、内服では卵胞が育たないので、注射(hMG製剤やFSH製剤)の治療となります。月経中のホルモン基礎値を調べることで分かります。

 

卵管疎通障害とは

卵管が通っていない状態(閉塞)か、一部通りが狭い状態(狭窄)です。このような場合、以前は体外受精へステップアップが推奨されていましたが、現在では、卵管鏡下卵管形成術といって卵管の中に細い風船を挿入して押し広げる手術があります。手術による再疎通率は90%と高く、術後6カ月以内の妊娠率も約30%ほどあります。ただし疎通性が再開していることと、卵管の機能(受精卵を子宮へ運ぶ機能)が保たれていることとは別であるため、手術後6か月経過しても妊娠に至らない場合は、ステップアップした方が良いと思われます。

 

精液とおりものの相性?

排卵間近になると伸びるような”おりもの”が出ますが、伸びるようなおりもの中を精子が泳ぎやすくなります。排卵間近に性交渉をもってもらい12時間以内におりものを採取して、顕微鏡で、おりもの中に何匹泳いでいる精子がいるかをみることをフーナー検査と言います。直進する精子が1匹以上いれば、問題なしとなります。フーナー検査が不良となった場合、その原因として女性側に抗精子抗体やピロリ菌抗体をないかを採血で確認します。

フーナ―検査良好ならば→タイミング療法

抗精子抗体(+)なら→体外受精や顕微授精

ピロリ菌抗体(-)→人工授精(AIH,IUI)

ピロリ菌抗体(+)→ピロリ菌除菌用の抗生剤を内服→次周期に再度フーナー検査

再度フーナー検査不良→人工授精(AIH,IUI)へステップアップ

という手順となります。

 

精液所見が不良とは

WHOの発表した2010年の改定基準を示します。

精液量  1.5 mL 以上

総精子数 3900万個以上

pH 7.2以上

精子濃度 1ml中に 1500万個 以上

精子運動率  40% 以上(前進運動精子が32%以上)

正常形態精子  4% 以上

精液中白血球  100万個/mL 未満

この基準を上回れば、精液所見として問題ありません。結果がよくなくても、日によって精液所見は大きく変動しますので2-3回検査を行うようにしましょう。

 

黄体機能不全とは

卵胞が育ち、排卵したら、その残った所を黄体と言います。ここではプロゲステロンが産生されています。排卵1週間後に血液検査をして、E2(エストロゲン)<100pg/dl、P4(プロゲステロン)<10の場合は、黄体機能不全と診断します。受精卵が着床するには、排卵後にしっかりプロゲステロンが分泌されていることが重要です。 もし黄体機能不全の場合は、治療として排卵誘発剤(内服、注射)を使用して卵胞をしっかり育ててホルモンを分泌させるようにすることが必要です。それでもP4が低い場合は、プロゲステロン剤(内服、注射)の補充を行います。

 

甲状腺機能異常とは

甲状腺とは喉のところにある臓器です。甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは、食事からとった栄養をエネルギーに変換するなどの体の新陳代謝を促進する働きをしています。甲状腺機能が高くても低くても妊娠を妨げる方向に動きます。

 

高プロラクチン血症とは

プロラクチンは、妊娠中や授乳中に多く分泌されるホルモンです。日中は低く、夜間は高い、食後や運動に連動しては高くなります。多くプロラクチンが分泌されると妊娠中&授乳中と同じ状態であり排卵が抑制されたりし、月経不順の原因となります。

 

子宮筋腫と子宮内膜症

子宮筋腫は子宮の間質と言われるところから発生する良性の腫瘍のことを指します。漿膜下、筋層内、粘膜下と3種類に分類されますが、筋層内や粘膜下筋腫が不妊原因となります。症状は過多月経(月経の量が多くなる)や月経困難症(月経痛がひどい)です。日本産科婦人科内視鏡学会では筋層内筋腫で5cmをお超えるものについては手術適応というガイドラインを出しています。また粘膜下筋腫は子宮内に筋腫が突出しており着床障害の原因となる可能性があります。手術療法が一般的です。腹腔鏡手術や子宮鏡手術です。

子宮内膜症は、子宮の内膜様の組織が、子宮内膜以外の場所で増殖と退縮をくりに返す病気のことを言います。代表的なもとしてチョコレート嚢胞が有名です。これは卵巣内で出血を繰り返しますが、排出できないため卵巣内に血液が溜まる病気です。また周囲臓器との癒着を起こすためピックアップ障害の原因となります。

治療としては卵巣嚢胞を卵巣から剥離する手術を行いますが、正常の組織も一緒に摘出されることが多く、手術後の卵巣機能低下が問題となっています。卵巣嚢胞が大きくなりすぎ(8cm超え)や採卵がしずらい場合は手術療法が勧められます。

今回はここまでです。

次回は不妊の原因となるSTD(性感染症)についてお話していきます。

それではまた