みなさんは中隔子宮という言葉を聞いたことがありますか?

おそらく大半の方が「知らない」というでしょう。これは、子宮奇形の一種で、不育症の原因の一つです。

厚生労働省不育症研究班から報告された不育症のリスク因子で子宮形態異常は7.8%となっています。それ以外の項目としては、甲状腺異常や血液凝固異常などありますが、今回はここでは触れません。データは527名、年齢34.3±4.8歳、既往流産回数2.8回±1.4回、重複ありとなっています。

どのようにしてこの「子宮奇形」が見つかるかというと、みなさんご存知の「卵管造影」です。他の検査としては、最近では三次元超音波検査というものがあります。3D的に子宮の形をとらえる検査ですね。

いわゆる正常と分類されるものに「正常子宮」と「弓状子宮」というものがあり、弓状子宮とは子宮のてっぺんが弓なりのように凹んでいるものを指します。不育の原因とはならず手術の必要もありません。

次に「中隔子宮」、「双角子宮」です。

中隔子宮

「中隔子宮」は子宮内腔に中隔と言われる壁が張り出してきて子宮腔を左右に2分してしまう((左右に分かれてしまう)病態を指します。(上図の真中左側) 不育症の患者さんの中でも多くみられる子宮奇形です。その中隔に着床はしますが、流産を起こしてしまいます。

子宮鏡手術(TCR)で、膣から子宮へのアプローチによって子宮の中隔のみを切除することで治療をができ、妊娠継続率は改善します。 卵管造影検査だけでなく、子宮鏡検査、骨盤MRI検査を行い、しっかり診断した上で手術を行います。

双角子宮

子宮の形がハート型になった子宮を指します。(上図の真中右側) 卵管造影のみで「中隔子宮」か「双角子宮」かを判断するのは困難のため、子宮鏡検査や骨盤MRIにて鑑別します。

不育症患者さんの中で双角子宮の方はまれだと言われています。

子宮奇形で手術をした場合としない場合の出産率(妊娠率ではありません)を他施設合同研究を行ったデーターをお示しします。

双角子宮の場合、形成手術をした場合75.0% (9/12)、しなかった場合85.7% (24/28)であり、手術のメリットはなし。中隔子宮の場合、子宮鏡下中隔切除術をした場合86.5% (83/96)、しなかった場合69.2% (9/13)であり、手術のメリットがあるかもしれない。

Sugiura-Ogasawara M, Lin BL, Aoki K, Maruyama T, Nakatsuka M, Ozawa N, Sugi T, Takeshita T, Nishida M. Does surgery improve live birth rates in patients with recurrent miscarriage caused by uterine anomalies? J Obstet Gynaecol 2015; 35: 155-158.

子宮奇形にはその他、「重複子宮」、「単角子宮」などありますが、不育に関連するのは、ほぼ「中隔子宮」と考えて良いでしょう。

ここでは双角子宮は手術をしても生産率(出産率)は有意な差をもって改善はしないということになります。双角子宮の手術は子宮鏡のみでなく、腹腔鏡もしくは開腹術と併用して行います。だとするとおなかに傷を入れてまで手術を行うか疑問ですね。

それでは「中隔子宮」に対して手術するのは、同様なケースでしょうか?

ここで手術をしない場合のデータをお示します。

最初の妊娠で60%が最終的には78%が出産に至る

不育学級 杉俊隆

そうなると子宮奇形を指摘されてもすぐの手術の必要ないでしょう。

つまり流産(2回以上)を繰り返す方が手術の適応となるわけです。もちろん他の不育症の因子は否定する必要はあります。

最終手段として手術を行うならば低侵襲、日帰り手術のできる子宮鏡手術がお勧めです。

「中隔子宮と言われた」「子宮が異常だと言われた」と思われた方、一度ご相談ください。あなたの納得のいく結論を一緒に出しましょう。

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