培養士の小野寺です。今回はスパームセパレーターという精子選別器をご紹介します。
当院では通常の精子調整法に加えて、希望制のオプションとして微孔性フィルターを用いた精子の選別をおこなっています。
そもそもなぜ選別する必要があるのでしょうか?
それは精液中には、白血球や雑菌、プロスタグランジンという子宮を収縮させる物質、動いていない精子も含まれています。
人工授精や体外受精時には運動精子のみを抽出して精子を利用します。そのため分離選別が必要となるのです。
スパームセパレーターとは?
スパームセパレーターでは、フィルター下部に精液、上部に培養液を静置し、フィルターの穴を通り抜けて上部に泳ぎ上がってきた運動精子を回収します。8μmという細孔をくぐり抜けなければ上部に到達できないため、運動性の高い精子の回収が可能です。
通常の調整法は?
通常の精子調整法は遠心分離を行い、異常精子は、比重が低いという性質があり比重の違いを利用して運動精子を選別し、回収しています。
しかし、この一般的な方法では、遠心分離を行うことによる精子へのダメージ(酸化ストレス等)があるのではないか?との指摘もあり、より良い精子調整法が検討されてきました。
スパームセパレーターのメリットは?
スパームセパレーターを使用し遠心分離を行わないことで、活性酸素種発生のリスクを減らし、DNAの損傷(断片化)を減らすことができるという報告もあります(1)(2)。当院でもより高い妊娠率を目指し、新しい技術を含めた検討を今後も行ってまいります。
スパームセパレーターのデメリットは?
スパームセパレーターの懸念としては、精子を調整させていただいた結果、従来法よりも少ない精子回収量となり、体外受精から顕微授精に変更となる可能性があることです。顕微授精を希望されない患者様は、医師にご相談ください。また、人工授精時についても回収量が少なくなる可能性があります。
参考文献
(1)D.Palermo et al. Selection of spermatozoa with higher chromatin integrity through a microfluidics device
(2)R.Marrs et al. Microfluidic sperm selection by the ZyMot sperm separation device concentrates sperm with significantly less DNA damage for subsequent ART procedures.