Prewash total motile count is a poor predictor of live birth in intrauterine insemination cycles

Erin B. Mankus, et al.
Fertility and Sterility, Vol. 111, Issue 4, p708–713
Published in issue: April 2019

 

IUI周期を受けるカップルにおいて洗浄前の総運動精子数が生児獲得の予測因子となるかどうかを調べました。

2010年から2014年までの間に内服や注射を使って排卵誘発を行いIUI実施した310組のカップル、655周期(1組のカップルがだいたい2回IUIを実施しています。レンジは1-11回)が対象です。

調査結果は第一に出産に至ったケース、第二に臨床妊娠に至ったケースを検討項目としました。

誘発はクロミッド(CC) 内服のみ424名、クロミッド+ゴナドトロピン注射(hMGまたはrFSH) の組み合わせ(CC+ゴナ)30名、レトロゾール(Ltz)内服のみ90名、レトロゾール+ゴナドトロピン注射11名、ゴナドトロピン注射のみ58名、自然周期42名でした。自然のLHサージ(尿排卵検査薬で陽性)12-36時間後、またはリコンビナントhCG皮下注(オビドレルなど)12-36時間後にIUIを実施しました。ソフトカテーテルを使用し、IUI後10分間仰臥位でいました。臨床妊娠は胎児心拍を確認、出産は24週以降の分娩と定義しました。

 

結果

カップルあたり累積出産率は20%1周期あたり累積出産率は10%でした。
女性の年齢34±4歳、不妊期間は3か月から12年。不妊原因は様々でしたが、もっとも多かったのが男性因子で、続いて排卵因子そして原因不明となっていました。
CCのみの周期あたりの生産率は9%、 CC+ゴナの周期は最も高い23%でした。
男性因子による続発性不妊症(二人目以降の不妊)はカップルの21%に該当し、カップル当たりの生産率は27%でした。女性因子+男性因子は+割合は9%アップつまりカップルの30%に該当し生産率は23%に下がりました。
生産率が最も高かった続発性の不妊症の原因は排卵障害であり全体の26%をしめ、生産率は29%でした、ROCカーブで総運動精子数が生産児獲得の予測能をもつかどうか検定しましたが、有意な関連は認めませんでした。

また総運動精子数200万個未満で実施した28回のIUIでは出産ケースはありませんでした。総運動精子数1600万から2100万個が生産率は最も高く12.5%(64症例)、2100万以上は生産率11.4%(341症例)でしたが、有意な差は認めません。

続いて年齢と生産率を比較した場合、負の相関を認めました。ROCカーブで37歳を超えると有意に生産率が下がることが分かりました。(感度90%、特異度70%) 生産率は37歳未満の25%と比較して37歳以上は7%へ低下しています。生児獲得した90%は37歳未満でした。

結論

①洗浄前の総運動精子数では生児獲得の予測因子にはならない。

②37歳未満の女性の方が37歳以上の女性よりも生産率が高い。

③200万未満の総運動精子でIUIを実施しても生児は獲得できない。

 

解説

精液所見の正常値は2010年WHOから発表されています。
201.4.16 不妊症の原因が男性である場合は? 無精子症のケースを参照してください。
それらを計算すると総運動精子数は900個以上が正常となります。
いくつかの報告では総運動精子数が900万個未満場合、IVF(体外受精)を推奨しています(Van Voorhis, et al. Effect of the total motile sperm count on the efficacy and cost-effectiveness of intrauterine insemination and in vitro fertilization. Fertil Steril. 2001)。
35歳以上、総運動精子数500万個未満、正常形態率が30%未満の男性不妊因子がある場合IUIでの臨床妊娠(胎児心拍確認)できるチャンスはないとの報告もあります(Badawy, A et al.  Effect of sperm morphology and number on success of intrauterine insemination. Fertil Steril. 2009)。

今回の報告では①が分かりました。

②は37歳という年齢がノイアスでしょうか? ③は参考にしてもよいですね。

今回は不妊歴がない同性カップル(ドナー精子でIUI)が参加しており、不妊カップルと比較するとそのカップルの妊娠率は上がってしまうため、そのような症例を除外する必要があります。またサンプル数が少なったとしています。さらに症例を追加して検討する必要がありそうです。