今日は不妊治療における排卵誘発剤注射の副作用についてご質問がありましたのでお話します。

排卵誘発剤注射とは

排卵誘発剤注射には HMG 製剤 、FSH 製剤の2種類があります。いずれ注射も卵胞の発育を促す注射です。

hMG 製剤は FSH と LH の配分によって種類が異なります。例えば、フェリングはFSH と LH が1:1の配分になっているhMG製剤です。また  LH が FSH に対してほとんど含まれていない配合もしくは全く含まれない注射のことをFSH 製剤といいます。フォリルモンやゴナピュールはFSH と LH が1:≦0.0053の配分となっています。医師は患者さんのホルモン採血の結果によって注射を使い分けています。

 

体外受精治療のおける排卵誘発剤注射は毎日投与することが 前提となっていますが、これは、しっかり刺激をして1回の採卵で多くの卵を確保することが目的だからです。

排卵誘発剤注射の副作用について

では治療を行う上で排卵誘発剤は有効な薬剤ですが副作用はないのでしょうか?副作用は

①注射部位の発赤やかゆみ

② ①よりも症状が強く、アレルギー症状(目が腫れる、呼吸が苦しくなるなど)

③腹部膨満感

④OHSS(卵巣過剰刺激症候群)

⑤皮下出血

 

解説

それでは少し説明します。

①②はアレルギーに該当します。薬剤が体に合わないケースです。発生頻度は低いですが、一定の割合で起こります。症状がひどい場合は、薬剤の変更することがあります。

③おおよそ一つの卵胞が18-20mmぐらいになったところで採卵を決定します。複数個の卵胞がその大きさになると卵巣の体積が大きくなってきます。ですから卵胞が14-15mmになってくるとお腹に違和感を感じます。そこからさらに卵胞が大きくなってくると腹部膨満感(お腹が張ったように感じること)が出てきます。

④OHSSは排卵誘発剤(内服、注射)の投与により卵胞が過剰に発育し、排卵(採卵)後に卵巣腫大、腹水貯留(お腹にお水が溜まること)等による様々な症状(腹部不快感、悪心・嘔吐、下痢、乏尿、呼吸困難)を呈する症候群を指します。多くの場合は軽症ですが、まれに深部静脈血栓症など、生命に関わる重篤な場合(肺塞栓、脳梗塞など)も起こり得ます 。

⑤これは副作用ではないですが、注射穿刺周囲に皮下出血がおこることがあります。これは針が皮下の細い血管に当たって出血したことが原因です。

①②は一時的なものです。薬剤変更で対応できます。⑤は穿刺部位の変更が穿刺法を看護師と再度確認してもらうことで改善できます。 ③④は卵巣と反応が良いため起こってしまうのは仕方ないのかもしれません。それよりもOHSSと避けるために刺激を弱くすると取れる卵も取れなくなってしまう中途半端な刺激になることがあり、そこは主治医とよく相談して注射量や注射の期間を決める必要があります。

OHSSの予防法

⑤の予防方法は以下の方法です。

・コースティング(hMG、FSHの注射投与を中止し、E2低下を待つ)

・トリガー(採卵の準備のために採卵2日前に行う処置のこと)のhCGを減量

・トリガーをGnRHaに変更(点鼻薬)

カバサール内服(ドーパミン製剤

全胚凍結(胚移植は次回以降の周期に行う)

となります。

 

いかがでしょうか?副作用を知って少し怖いと感じられたかもしれませんね。ただし知識を持っておくことで、主治医に相談しやすくなると思います。不安に思われた場合は、google先生に聞く(笑)のも良いですが、主治医とよく話合う(相談)ことが重要だと思います。