月経3日目のエコー所見で胞状卵胞(2-6㎜)が多数ある
場合、刺激をし過ぎるとOHSS(卵巣過剰刺激症候群)に
なりますし、刺激が弱すぎると未熟な卵胞だらけで回
収率も悪くなります。

OHSSを避けるために未熟な卵胞の状態で採卵しその後
、体外で、追加培養し成熟した卵に対してICSIを行うこ
とをIVM( in vitro maturation of oocyte)と言います。

今回通常通りの刺激とIVM後の新鮮胚移植または融解
胚移植を行った場合の妊娠成績およぼ副作用の発症率
を検討したベトナムから論文を紹介します。

 

The effectiveness and safety of in vitro maturation of oocytes versus in vitro fertilization in women with a high antral follicle count.

Ho VNA, Braam SC, Pham TD, Mol BW, Vuong LN.

Hum Reprod. 2019 May 21. pii: dez060. doi: 10.1093/humrep/dez060. [Epub ahead of print]

目的

多数の胞状卵胞をもつ女性にとって効果的で安全な治療はIVMかIVF(実際はICSI)かを検証すること

結果

IVMは3日間 IVFは9.4日間(中央値)の刺激、FSH製剤総量として(IVM 300単位 VS IVF 1995単位)となり採卵数はIVM 15.6個 IVF 15.4個と差はなし。採卵時の成熟卵率はIVM群 5.9%(564/9509)  IVF群 11.9%でありIVF群が有意に成熟率は高かった。 

IVM群は511件新鮮胚移植、167件融解胚移植 IVF群は209件新鮮胚移植、185件融解胚移植を実施。卵の成熟率、受精卵数、良好胚数、凍結胚数はいずれもIVF群に対して有意に低値であった。

初回移植後の出産率はIVM群36.5%(222/608)、IVF群40.8%(127/311)と有意な差はなく、1年間の累積出産率はIVM群39.3%(239/608)、IVF群は49.8%(155/311)であったが、これも有意な差は認めず。IVM群ではOHSSの発症は認めず、IVF群は3.5%(11/311)であり副作用の発症率はではIVMに軍配があがった。

解説

対象と方法:胞状卵胞が24個以上ある18-38歳の女性を対象。ARTの適応は排卵障害が両群とも一番で続いて男性因子、卵管因子そして原因不明だが、いずれも両群間に有意な差は認めず。D2もしくはD3胚を移植しました。

IVM群は月経3日目からFSH製剤100単位 を3日間継続投与し、内膜の厚さ、卵胞の大きさをみて6日目にHCG10000単位を投与し36時間後に採卵。

採卵後sliding techniqueという方法で成熟度を判別し、そこで成熟卵はICSIを実施。未熟卵と判断されれば、IVM用の培養液に20時間培養し、成熟すればICSIを実施、残りの未熟卵はあと4時間追加して再度検卵、ICSIを行った。

IVF群は月経3日目からFSH製剤(150-225単位)を投与し主席卵胞2個が卵胞径17㎜以上となったところでHCG(オビドレル)0.25mgを投与し36時間後に採卵を実施。

919名( IVM 608名 IVF 311名)が参加しました。その後 新鮮胚移植またはいったん凍結した後翌周期以降に融解胚移植を行った。新鮮胚移植でうまく行かなかった人は次は融解胚移植を行った。

結論 

胞状卵胞数が多い女性の治療としてIVMは著しくOHSSを減らし、やさしく費用対効果の高い治療法であり、実現可能なIVFの代替治療である。 

 

この研究の問題点はランダム化対照検定でないため正確に妊娠予後を評価するにはランダム化検定が必要である。

日本では多胎防止のため、原則、胚移植数は1個だが、今回の研究では複数個移植(2個以上)が両群とも90%以上であった。

それに伴う多胎妊娠率はIVM33.8% IVF群43.3%)と高率である。ちなみに2015年の日本のARTによる多胎発症率は3%。そのままこの条件で日本で同様な治療を行うことはできない。単一胚移植での比較検討試験が望まれる。

 

とは言え3回だけの注射で良いのであれば、患者さんの負担は減るし副作用が起こらなかったのはすばらしかった。単一胚移植の追加の研究が望まれます。 でも多胎率30-40%は高すぎです。