はじめに

久しぶりの更新となります。2022年4月からの体外受精治療の保険適用となりました。治療費用が抑えられることにより積極的に治療を受けられる患者様が増えたかと思います。当院でも多くの患者様が、人工授精からステップアップされ妊娠卒業されました。

当院の説明会でも保険と自費治療での違いの説明をさせていただいておりますが、自費で使用していた薬剤が使えない、保険適用の薬剤が入手困難になっているなど、当初は現場は混乱しておりました。現在は一部の薬剤の配給に問題が生じ、一薬剤が使えなくなると、他の代替え薬剤の需要が高まり、供給が滞るなど、まだまだ現場は混乱しております。私には自費診療の際にはこういった経験がありません。保険診療になってからこの状況に全国の不妊治療医および患者様に多大な迷惑がかかっていることを国および各メーカーはしっかりと認識する必要があると思います。

治療成績について

今回2022年1月~8月までの期間で初回の移植を行った患者様の治療成績をまとめましたので、ご報告いたします。
また後日2022年の治療成績のご報告予定です。

年齢を34歳以下、35~39歳、40歳以上の3群で妊娠率、臨床妊娠率(胎嚢が確認できる状況)を比較しました。

4月以降は自費で初回移植を自費で行わることはほぼ無いため1月~3月は自費、4月から8月が保険で移植を行った患者様の治療成績となります。胚盤胞の単一胚移植となります。

下記表をお示ししましたように、結果として自費治療が明らかに保険治療よりも妊娠率が高いことが分かりました。特に40歳以上の群では、保険での初回移植では臨床妊娠には至りませんでした。

原因として自費診療では着床障害の原因となる要因に対しての事前の対策をとっていたことや移植周期中のホルモン採血結果が基準を下回っている場合に補充するなどの対応が可能ですが、保険診療では、事前の対策をとることはできない、また追加薬剤投与が認められていないことなどがあげられます。

まとめ

2022年1月~8月までの初回胚移植の患者様を対象に妊娠率をご報告しました。妊娠率は初回に至っては、自費診療のグループが妊娠率が高いことが分かりました。同じ薬剤を使用してない(使用する薬剤の種類が減った)、慢性子宮内膜炎に対しての治療を予防的に行っている、子宮鏡検査がスクラッチ効果がある? 血液中の銅の値の確認など自費診療独自の治療が成績に影響した可能性があります。症例数がすくないため、絶対に自費診療での胚移植が優れているとは言い切れませんが、さらなる検討で保険診療及び自費診療での妊娠率を改善できるように対策を講じていきたいと考えております。

後日2022年の治療成績をご報告をいたします。直近の保険診療データ(2022.4-11)での妊娠率は大幅に改善し、すべての年齢の平均妊娠率は61.4%、臨床妊娠率は50.3%となっています。 8月までの保険診療成績をうけてホルモン剤の投与開始時期の変更などの対策を行った結果ではないかと考えております。この治療成績は大手クリニックと比較しても遜色ない成績だと自負しております。 2022年1年間の治療成績はもうしばらくお待ちください。