精子の正常値はWHOから発表されているものを通常用いて判断しています。しかし、以前から申し上げているように、妊娠した方の分布図の後2.5%に位置している方の中央値の数値であり、実際はそれだけでは男性因子があるなしを言うには、問題があります。見た目は問題なくてもDNAのダメージが高頻度に起こっている場合もあり、ダメージの多い精子が卵子と受精した場合、胚盤胞到達率が低いことが分かっています。今回妊娠予後や着床率、胚盤胞到達率、臨床妊娠率など興味深い因子の関連を報告しています。ブラジルからの報告です。
Sperm DNA fragmentation is correlated with poor embryo development, lower implantation rate, and higher miscarriage rate in reproductive cycles of non–male factor infertility
Edson Borges Jr., M.D., Ph.D, et al.
対象
2016年6月から2017年6月までに実施された475サイクル
サイクルは、精子DNA断片率(SDF:sperm DNA fragmentation) に従って2つの群に分けた。
①<30%SDF(n = 433)および②≧30%SDF(n = 42)。SFDによって胚発生、着床率、流産率、妊娠予後について検討した。
結果
受精率は群間で同様であった(≧30%SDF、85.28%±1.06% 対 <30%SDF、90.68%±3.61%)。SDFが高い周期では、臨床妊娠率は同等(≥30%SDF、30.40%対<30%SDF、32.40%)であったが、通常の卵割速度が有意に遅い(SDFが30%以上、SDFが61.12%±4.21%、SDFが30%未満、72.53%±1.24%)、3日目の高品質胚が低い(SDFが30%以上、23.07%±5.56%) vs <30%SDF、36.41%±1.53%)、胚盤胞形成率が低い(≥30%SDF、39.09%±2.73%vs. vs <30%SDF、58.83%±7.59%)、胚盤胞の質(3AA以上の胚盤胞数を全体の胚盤胞数で割ったもの)が有意に低い(≥30%SDF、11.97%±1.22% 対<30%SDF、30.09%±2.39%))、および着床率が有意に低い(≥30%SDF、33.24%±1.66% 対<30%SDF、46.40%±4.61%)ことが分かった。
2.5倍の流産率が、確認された(≧30%SDF、42.8% 対<30%SDF、16.8%)。
結論
SDFが高いほど、非男性因子不妊症の細胞質内精子注入(ICSI)サイクルにおける胚発生不良、着床率の低下、および流産率の上昇と相関していることが分かった。精子の欠陥が隠されているかもしれないので、SDFテストは未知の不妊歴を持つ男性の精子品質評価に追加の情報をもたらすことができる。
今回の研究では断片率の違いを分類した2群で禁欲期間の差が明らかに異なった(≥30%SDF、5.51±5.46日 対<30%SDF、3.92±2.42日 P< 0.002)。禁欲機関が長いと精巣上体内で精子が死滅して活性酸素が発生します。それにより残っている精子のDNAのダメージが来ることが分かっています。よく言われる事ですが、頻回(2-3日 できれば毎日)の射精が望ましいことが分かります。 当院ではSDF検査を実施する予定です。詳細は改めてHPで説明いたします。