当院の日帰り手術について
当院では子宮鏡手術、卵管鏡手術、流産手術、腹腔鏡手術(今後予定)を日帰りで行っております。
少し前の日本では、子宮鏡手術、卵管鏡手術、流産手術は全身麻酔を行うため、入院日数1泊2日で手術を行っていました。
当院は日帰り手術です。
日帰り手術はアメリカでの発想
ご存知の方もおられるかと思いますが、アメリカは医療費が大変高く一泊数万~数十万円もします。健康保険制度がないため高額な個人保険に加入できている場合は、安心して入院できますが、そうでない場合は、むずかしいお話となります。また保険の種類によっては受けらる手術も限度があるなど、複雑になるので今回はさらっとお話します。
分娩の場合
日本でも分娩は自費診療です。つい先日、英王室のハリー王子(34)とメーガン妃(37)に第1子の男の子が誕生しましたね。出産後数時間で退院されました。これはさすがに驚きました。アメリカでも出産の翌日の退院が当たり前のようです。新生児健診が分娩後4-5日後に行われるので、赤ちゃんを連れて外出しないといけないのは褥婦さんにとっては大変なことだと思います。ただ欧米では当たり前のように行われており、ママさんパワーには敬服させられます。
出産後の入院期間が短いことは医療費が高いという理由より、出産は病気ではないために出産後すぐの退院という発想になるようです。欧米らしい発想です。一方、日本はお母さんが体を休める期間を設けて、落ち着いたところで退院となります。入院中に乳児検診もされます。これはお母さんにとっても赤ちゃんにとっても負担が少なく良いシステムだと思います。
では異常分娩の場合、例えば帝王切開を行った場合、日本では健康保険適応になります。入院期間は大体術後7日間です。
一方アメリカでは、保険で医療費をカバーできる人でも、早めに退院です。私の知人は、アメリカで分娩しましたが、前治胎盤で帝王切開となりました。保険には加入していましたが、術後2日目には退院しました。急性期の出血のリスクが少なくなれば、自宅で安静、入院日数が短くなるように工夫されているのですね。分娩だとイメージが湧きやすいでしょうか?
鼠径ヘルニア術の場合
日帰り手術の典型的な症例疾患名は鼠径ヘルニアです。日本も腹腔鏡下鼠径ヘルニア術は日帰り手術が行われるようになりましたが、それでもどの施設でも日帰り手術が可能ではありません。
あくまでも個人的な意見ですが
日本では、術後の全身状態などのチェックを看護士さんが行っています。病棟には入院期間の異なる患者さんがいます。そのため日帰りの患者さんがいると業務が大変になります。実際アメリカでは日帰り手術センターがあり、その施設内で日帰りの手術が行われています。入院日数や重症度の異なる患者さんが多数いる中での日帰り手術は看護師さんの賛同が得られないし、また病院としても短期間の入院をしてもらった方が、売り上げとしてはあがるので積極的に日帰り手術を推し進めることが憚られていました。 最近では日帰り手術にも様々な見直しが行われ、積極的に日帰り手術が行われる環境が整いつつあります。
婦人科は?
婦人科はどうでしょうか? 悪性手術の患者さんから分娩まで扱った病棟(婦人科と産科で病棟別のことあり)では、先に話した理由で日帰り手術はハードルが高いものとなっています。
実際、術後再出血が考えられる大きな手術(子宮筋腫関連)では入院は必要かと思われますが、その他の卵管、卵巣、内膜ポリープの手術に関しては、術後再出血は、頻度が低く外来レベルで行える手術と私は考えています。実際に日帰り手術を行っている施設もあります。
実際、前職場で日帰りの子宮鏡手術や卵管手術、流産手術を行って入院の必要(吐き気、腹痛、出血など)が発症したケースは無く、皆さん無事に帰宅されました。
帰宅できるのに患者さんが入院を希望する
理由はなんでしょうか?
それは吐き気です。吐き気がひどくて歩けないので、帰れないと患者さんが思ってしまうことです。当院では、その吐き気がなるべく起こらないように工夫した麻酔を行っております。
帰宅基準(Post Anaesthetic Discharge Scoring System:PADSS)
帰宅基準のスコア化によりPADSSが9点もしくは10点であれば退院が可能です。
嘔気のある患者さんには飲水が可能であれば、吐き気止め薬をもって帰宅していただきます。
万が一、入院が必要と判断された場合は、連携先の病院に連絡をとり、搬送させていただきます。
いかがだったでしょうか? 長文となってしまいまして申し訳ありません。要するに、当院が考える上記疾患に対しての手術は入院して行われる必要はなく、日帰り手術を安心して受けていただくことができます。