Vaughan DA, et al.
Fertil Steril. 2017 Feb;107(2):397-404.e3. doi: 10.1016/j.fertnstert.2016.10.037. Epub 2016 Dec 1.
みなさんは、1回の採卵にどの程度の卵が回収できれば、子供を授かることができるのか?
気になるところですね。少し前の論文になります。卵子が多数取れれば、なんとなく出産できる確率は上がるのではと感覚的に思われると思います。
しかし数が多くなれば、刺激の注射費用も高額になりますし、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)になる確率も上がるので、適正な採卵数がいくつかなのかというところが議論になっていました。
それを具体的な数値で示した論文です。ボストンからの報告です。
目的
1回の完全体外受精(IVF)周期で、不妊患者が平均的な家族(ここでは子供2人と定義)を形成するには何個の卵母細胞が必要かを検討した。
結果
対象者は2226名で1874名が初回に新鮮胚移植を行った。15個以上の卵母細胞が回収された場合(699個中289個、41.3%)は15個未満の卵母細胞(1,419個中518個、36.5%)より妊娠率は統計的に有意に高かった。
2人以上を出産した場合を最終結果とし、残っているすべての凍結胚を使用したと仮定して調査したところ、2,226人中498人(22.4%)の患者が2人以上出産していることがわかった。
多変量解析では、複数の要因を調整すると、回収される卵母細胞の数が増えるにつれて、少なくとも2人以上出産の可能性が高まり、オッズ比は1.08(追加の卵母細胞あたり8%の出生増加)となった。
結論
1回のIVF周期で数多く(>15)の卵母細胞を回収し、新鮮胚移植を行う方法が、最適な方法と実証した。
近年の凍結技術により、”one and done “という1回の採卵ですべて到達できるという概念により1回の採卵で2人以上を出産できることが実証された。
今回約4分の1(498人/2226人中)の患者で1回の刺激で2人以上の出産を安全にできることが証明された。
解説
1回の採卵で15個以上卵母細胞を獲得できれば、そのうちの約25%の人が目標を到達できることを証明した論文です。
1人目も2人目の生児獲得率は、卵母細胞数が10-14個の場合43.9%、10.1%、卵母細胞数が15-25個の場合、53.9%、12.2%、卵母細胞数が26個以上の場合57.9%、15.1%と上昇しますが、OHSSは15個以上で明らかに数が増えており、それを考慮にいれると獲得目標とする卵母細胞数は15個前後ぐらいの良いと思われます。
なかなか解釈が難しい論文です。最近では移植当たりの妊娠率ではなく妊娠するまでにどの程度時間がかかるかを評価する論文も出てきています。つまり妊娠するまでの必要なトータルの時間が短くなるには最低何個の卵母細胞が必要なのかという話です。またご紹介します。